医薬品

抗生物質で低血糖? ピボキシル基を有する抗生物質について徹底解説

2021/8/05(木)

 

 
こんにちは。Mr.Tです。
今回はピボキシル基を有する抗生物質についてです。
 

ピボキシル基。  

置換基の一種です。  

いかにも有機化学っぽいですね。

有機化学にアレルギーを持っている人も多いのではないでしょうか。

ちなみにMr.Tは有機化学専攻でしたが、ほとんど忘れました(笑)

有機化学の勉強法についてはこちらの記事から

【薬学部・有機化学の勉強法】 反応機構がわかれば苦手から得意に変わる!
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ピボキシル基を持つ抗生物質は主に第3世代のセフェム系や経口カルバペネム系の抗菌薬に多いのですが、このピボキシルを有していることで低カルニチン血症血糖をおこすことがあります。  

今回はその原因となるピボキシル基について説明します。  

 

ピボキシル基とは

腸管吸収を高める為にこのピボキシル基というものがついています。

有効成分に初めからついているものではなく、意図的につけたものなのですね。

 

低カルニチン血症、低血糖症状が起こる作用機序  

2012年にPMDAから注意喚起がされています。

以下、抜粋します。

 

低カルニチン血症、低血糖に至る機序1)2)

ピボキシル基を有する抗菌薬は、消化管吸収を促進する目的で、活性成分本体にピバリン酸がエステル結合されています。これらの薬は吸収後、代謝を受けてピバリン酸と活性本体になります。ピバリン酸はカルニチン抱合をうけピバロイルカルニチンとなり、尿中へ排泄されます。この結果、血清カルニチンが低下することが知られています。
カルニチンは、食物からの摂取のほか、アミノ酸からの生合成により体内に供給されます。また、ミトコンドリア内での脂肪酸β酸化に必須な因子です。空腹、飢餓状態では通常、脂肪酸β酸化によって必要なエネルギーを確保し、糖新生を行います。しかし、カルニチン欠乏状態だと脂肪酸β酸化ができず、糖新生が行えないため、低血糖を来たします。

1): Melegh B,et al. Biochem Pharmacol. 1987; 36: 3405-3409.
2): Holme E, et al. Lancet. 1989; 2(8661): 469-473.  

引用:000143929.pdf (pmda.go.jp)

 

この時はまだMr.Tは薬剤師ではなかったので知らなかった…  

カルニチンは成人では必要量の10~25%は体内で合成されますが、乳幼児期は合成能が未熟で、摂取量が少ないとすぐに欠乏症になってしまいます。

小児や乳幼児にメイアクトMSなどのピボキシル基を有する抗生物質を投与する際は血中カルニチンの低下に伴う、低血糖症状に注意する必要があります。

抗生物質は基本は長期で飲むものではないのですが、飲んだ翌日、長期投与のどちらも低カルニチン血症の症例は報告されているので注意しましょう。

また、妊婦の服用により出生児に低カルニチン血症が認められた報告もあります。    

 

ピボキシル基をもつ医薬品

 

商品名一般名
オラペネムテビペネムピボキシル
トミロンセフテラムピボキシル
フロモックスセフカペンピボキシル
メイアクトMSセフジトレンピボキシル

 

一般名では「ピボキシル」とついているのでわかりやすいですね。

これらの服用はすべて「食後」となっています。

低血糖症状と結びつけると覚えやすいですし、納得です。      

 

Mr.Tの経験談  

今回説明したピボキシル基について知ったのは、メイアクト服用中にだるさを感じ、タリビッドに変更があったという事例を経験したときでした。  

メイアクトの添付文書にはこのような記載があります。

(6)小児等への投与

1)低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。
2)小児(特に乳幼児)においてピボキシル基を有する抗生物質(小児用製剤)の投与により、低カルニチン血症に伴う 低血糖があらわれることがある。血清カルニチンが低下する先天性代謝異常であることが判明した場合には投与しないこと。(「その他の注意」の項参照)

(9)その他の注意 本剤を含むピボキシル基を有する抗生物質(セフジトレン ピ ボキシル、セフカペン ピボキシル塩酸塩水和物、セフテラム ピボキシル、テビペネム ピボキシル)の投与により、ピバリン酸(ピボキシル基を有する抗生物質の代謝物)の代謝・ 排泄に伴う血清カルニチン低下が報告されている。また、小児(特に乳幼児)においては、ピボキシル基を有する抗生物質 (小児用製剤)の投与により、低カルニチン血症に伴う低血糖 があらわれることがあるので、ピボキシル基を有する抗生物 質の投与に際してはカルニチンの低下に注意すること)  

引用:メイアクトMS錠100mg添付文書

歯の治療を受けてメイアクトMS錠とカロナールを処方してもらい、服用2日目にだるさが出てきたので医師に相談したところタリビッドに変更となりました。

メイアクトは食後投与なのですが、患者さんは朝食を食べる習慣がなく、食事をせずに服用してしまったようです。  

ピボキシル基による低カルニチン血症、低血糖症状は小児に多いですが、食事の有無の確認やメイアクトは食後投与である大切さを痛感した事例でした。    

 

まとめ  


  • 体内で代謝される際、カルニチン濃度が低下するときに症状が出る 
  • 小児や乳幼児はカルニチンの合成能が未熟な為、症状がでやすい
  • 小児や乳幼児にピボキシルを持つ抗生物質が出されたときは注意
  • ピボキシル基をもつ抗生物質は食後投与
  • ピボキシル基をもつ薬は一般名に「ピボキシル」がつく 

 

PMDAから喚起されるほど有名な副作用ですが、実際に今回紹介した症例に出会うまでは知りませんでした。

もちろんその時は薬剤師ではなかったのでしょうがないのですが、実際に患者さんに症状が出てしまったあとでは知らなかったでは済まされません。

常に新しい情報を得ながら知識をレベルアップさせていきましょう。

 

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参考文献:

  1. メイアクトMS錠100mg添付文書

  2. 極める! 小児の服薬指導

4.5

この本の対象者

・薬剤師・薬学生
・小児の薬を勉強したい人
・小児の服薬指導に活かしたい人

小児の薬や服薬指導は正直難しいです。

服薬する本人に直接指導するわけではなく、お母さんなどの保護者に指導することが多いです。

薬の選択も小児特有の難しさがあります。

これらのポイントを解説してくれる本です。

イラストや図・写真などが満載でとてもわかりやすく解説されています。

また、保護者をサポートする患者指導箋が収録されており、とても役に立ちます。

どうしても子どもの服薬指導では充分な時間が取ることができず、指導し忘れや質問したいことができない患者さんもいます。

その内容を帰宅後でも確認できるような指導箋となっています。

 

POINT

・小児の薬や指導に関して普段疑問に思うことの解決方法が満載
・イラストや図・写真などが満載でわかりやすい解説
・指導箋がとても役に立つ

 

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