抗がん剤と抗生物質の併用? 抗生物質を処方する意図について徹底解説

抗がん剤と抗生物質

 
こんにちは。Mr.Tです。
今回は抗がん剤と抗生物質の併用についてです。
 

抗がん剤と抗生物質の併用。

Mr.Tの薬局は面でやっているので、様々な病院から処方箋がやってきます。

ある日、がんセンターの病院から以下のような処方箋が来ました。

Rp.1
ジオトリフ錠40mg 1T
1日1回 朝食前 14日分

Rp.2
クラビット錠500mg 1T
1日1回 朝食後 5日分

Rp.3
カロナール錠200mg 2T 
発熱時 5回分    

 

クラビットは様々な症状に対して使われますが、膀胱炎に使われることが多いです。

Mr.Tの薬局では9割方膀胱炎に対して処方されるので、クラビットを見た瞬間反射的に 「膀胱炎かな?」 と思ってしまいます。

しかし、上記の処方では膀胱炎以外の可能性が高いです。

がんセンターの門前薬局では知っていて当然ですが、抗がん剤を調剤する機会が無い薬局だと、初めてこの処方に出会った時になぜクラビットが処方されているのか、医師の意図がわからない人が多いと思います。

今回は抗がん剤と抗生物質の併用について説明します。

 

抗がん剤による発熱

抗がん剤には様々な副作用があります。

その中でも発熱を起こすことがよくあり、ジオトリフ錠だと1%以上10%未満の確率で発熱が起こります。

発熱が起こったときの為にカロナール錠が処方されていますが、問題となるのは骨髄抑制により白血球が減少した場合に起こる発熱性好中球減少症(febrile neutropenia)です。

 

発熱性好中球減少症(FN)とは?

発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)。

以下、FNと記します。

FNは、以下のように定義されます。  

「腋窩体温で37.5℃以上の発熱があり、好中球数が500/mm3未満、または1000/mm3未満で48時間以内に500/mm3未満を予測できる状態」

また、FNと同様の好中球減少を認めるが、発熱が無い状態(腋窩体温で37.5℃未満)は無熱性好中球減少症(AFN)と呼びます。

好中球<100/mm3が1週間以上続くと予想される場合は、予防的に抗生物質を投与することがあります。

 

FNの重症化リスク

臨床で幅広く使用されている評価法として、MASCCスコアがあります。

重症化リスクの評価は、FNへの抗菌薬の選択などの対応法に役立ちます。

 

項目 スコア
臨床症状 無症状 5
軽度 5
中等度 3
低血圧無し 5
慢性閉塞性肺疾患なし 4
固形がん、または真菌感染の既往が無い造血器腫瘍 4
脱水無し 3
外来管理中に発熱
(入院中の発熱でない)
3
60歳未満 2

合計点数

21点以上:リスク
20点以下:リスク

*重度の好中球減少(100/mm3未満)が7日以上持続する場合もリスクとされます。

 

FNに使用する薬剤

上記の重症度により分類され、リスクとリスクに分類されます。

高リスクでは注射用の抗生物質(β-ラクタム薬、抗MRSA薬、アミノグリコシド系、ニューキノロン系など)が投与されます。

低リスクではクラビット(レボフロキサシン)シプロキサン(シプロフロキサシン)などのニューキノロン系薬とオーグメンチン配合錠が使われます。

~低リスク~

クラビット錠(+オーグメンチン配合錠)
シプロキサン錠(+オーグメンチン配合錠) 

 

キノロン系以外の薬剤

好中球減少が7日以上継続する場合や血液腫瘍では真菌感染症のリスクが高まるため、抗真菌薬が処方される場合があります。

この場合、ジフルカン(フルコナゾール)イトリゾール(イトラコナゾール)などが処方されます。

また、リンパ球が低下した患者ではニューモシスチス肺炎を発症する危険性があるので、予防としてバクタ配合錠(ST合剤)が推奨されています。

 

クラビットはFNの副作用対策に使う

以上に記載した通り、クラビットはFNの副作用対策として処方されています。

予防で飲むのか、発熱したときに飲むのかは冒頭の処方箋では判断できません。

クラビットも発熱時・頓服で飲むのであればわかりやすいですが、今回の場合は判断が難しいです。

患者さんが医師から指示を受けているので、患者さんに直接聞いてみるのが一つの手です。

今回の事例はMr.Tの薬局で実際に来た処方箋ですが、患者さんは新患でした。

今回ジオトリフとクラビットを飲むのが初めてではなく、継続で飲んでいたのでクラビットに関しての理解があり、

発熱したときから継続で5日間服用するように指示を受けた」

とのことでした。

患者さんがきちんと理解していなければ疑義照会しなければならない事例でしょう。

 

まとめ


  • 抗がん剤と抗生物質の併用は発熱性好中球減少症への対策のため
  • 高リスク、低リスクで使う薬が違う
  • 低リスクではクラビット、シプロキサン、オーグメンチンなどを使う 
  • 予防で使うのか、発熱による治療に使うのかをはっきりと

 

今回の事例では患者さんがしっかりと医師からの指示を理解していたので判断が容易でした。

しかし、初めてこのような処方箋を受け取ったときや、抗がん剤の調剤をあまりしない薬局ではクラビットの意図がわからない人が多いでしょう。

正直、Mr.Tが抗がん剤と抗生物質のコンボを初めて受けたのは調剤を始めてから2ヶ月しか経っていなかったので、処方意図がわかりませんでした。

患者さんが理解していてよかった…

自分が当たり前の知識だと思っていても、薬剤師・薬局によっては当たり前ではない可能性が高いです。

疑問に思ったことや調べた内容を薬局内で共有していけば自然と当たり前の知識になっていくので、ぜひ薬局内で共有してみてください。

教えることで記憶も定着しますので。

 

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参考文献:

  1. ジオトリフ錠 添付文書
  2. クラビット錠 添付文書
  3. 薬がみえる vol.3

4.5
この本の対象者

・薬剤師・薬学生
・医師・看護師などの医療従事者
・薬を深く知りたい人

  • 消化器系の疾患と薬
  • 呼吸器系の疾患と薬
  • 感染症と薬
  • 悪性腫瘍と薬

Vol.3なので、以上の項目が収載されています。

イラストが多めで「病気がみえる」に対応しています。

薬理学は解説が難しい書籍が多いのですが、イラストや図でわかりやすく説明されています。

薬剤師・薬学生には必須の一冊です。

 

POINT

・薬と病態を結び付けたわかりやすい教科書
・1,100点のイラスト・図表で病態生理も薬理もビジュアル化
・薬学生・薬剤師、医学生、看護師、MRなど、様々な分野の人たちに使える